【映画レビュー】ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから

エッセイ

会話をしていて何よりも素敵だと思うタイミングは、自分の話に対する相手の反応だ。それは、どんな反応だとしても生のエネルギーを感じる。楽しくも辛い、この世界に影響を起こし生きていることを感じるのだ。

 Twitterを始めて、1週間が経過しようとしている。日々の投稿や何気ない一言に対する皆さんの反応に喜びを感じていると共に、まだTwitterでの私の存在しか知らない人がこのブログに足を運んでくれる事をwriter1と共に嬉しく思う。本当にありがとう。

今回は、Twitterでおすすめ映画を紹介して頂いたのでレビューしたいと思う。『ハーフ・オブ・イット面白いのはこれから』Netflixオリジナル映画だ。他のレビューを見るとあらすじなどの説明が記載されている印象であるため、ここでは詳細なあらすじは省略して、この作品に対する感想を中心にお伝えできればと思う。

The Half Of It | Netflix Official Site
When smart but cash-strapped teen Ellie Chu agrees to write a love letter for a jock, she doesn't expect to become his friend — or fall for his crush.

恋愛と言う言葉を聞くと、私は何故かサザンオールスターズの『SEA SIDE WOMAN BLUES』の歌詞が頭に浮かぶ。"愛"という字にゃ"真心"で"恋"という字にゃ"下心"。とても的を得た歌詞なのではないか。恋愛は、下心から始まり真心を知ることのようだ。

あらすじ

この物語も下心から始まる。学校で成績優秀な女子生徒に、冴えないが元気を糧に生きる男子生徒が恋をした。彼は実に男らしく本能的で感情を抑えきれず彼女を求めるが、文才がない。

自分ひとりでの彼女へのアプローチを不安に思った彼は、成績優秀且つ、裏でクラスのレポート課題の代筆依頼を受ける、この上ない文才を持つ主人公に、ラブレターの代筆を依頼する。主人公は、寡黙で感情をあまり表に出さず、感情を相手に理解されることこそ馬鹿らしい事だと感じている。


 この映画のテーマは、物語の最初に登場する我が国を代表する作家カズオ・イシグロの書籍『日の名残り』という小説が全ての根底にあるテーマなのではないかというのが、大きく感じた印象だ。

主人公が落としたひとつの本を今後ラブレターを間接的に受け取るであろう彼女が拾い上げて言う。「『日の名残り』私も好き。感情を抑えた主人公の描写がいい。」と言葉をかける。ラブレターを受け取る彼女もまた、主人公のように感情を出さずに学校生活を送っていたのだ。

【カズオ・イシグロ】


 しかし、ラブレターの依頼者である彼の下心によって始まった思わぬ依頼により主人公の表に出さなかった感情や考え方がラブレターに記されて彼女の元に届く。また、彼女自身も主人公の考えに共感し、学校での冴えない彼と裏腹にラブレターでしか味わえない彼に心を寄せて行くのである。さて物語はどうなることやら。

主人公と私

このブログやTwitterで私は"語るシス"として活動をしている。アイコンはスターウォーズの悪役であるダース・シディアスであり、素人目に見て訝しい風貌のキャラクターだ。そんなキャラクターを通して、私は皆に語りかけている。

この映画は、そんな私達に向けられているのかもしれない。自分の素性を知ることができない状況における人に向けて言いたいことを言う主人公が、現在の一生懸命になってパソコンを睨みながら文章を打ち込んでいる自分自身と重なった。私も同様に私の多くを知らない人に別のキャラクターの顔を見せながら話しているのだ。

感情を表す

また劇中において、感情を隠せないラブレターの差出人の彼の行動は一見間抜けにみえるが、彼の行動によって感情を隠していた周りの登場人物も本心の出現を触発させられていく。大胆な行動こそ勇気があり、人々の感動を呼ぶものなのかもしれない。

  私の家のトイレで相田みつをが「感動とは感じて動くと書くんだよ。」と語っているが、もしかすると人の動きによって感じるものもまた一種の感動なのかもしれない。

この物語も含めて、改めて恋愛とは下心から始まり真心を知るものだと感じた。もしかしたら、友情も真心を知るものかもしれない。では始まりは、何であろう。友情の始まりは、同じ集団に属する為に強いられるものでなければ、哀れむ心からは始まるわけではない。始まりはきっと魚心である。魚に水と親しむ心があれば、水もそれに応じる心があるという。

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なかなか歳を重ねるごとに魚心だけで友情を築くことは互いに困難なのかもしれないが、いつか湧き出る水心を信じて人との付き合いをこれからも楽しんでいこうと思う。

 自分自身が"蔑む行動"であると認識する行動を一生懸命になって起こしている人がいたとする。もしかすると、これを目撃し、感じることで人々は真心に気づくのかもしれない。その行動はきっと蔑まれる一面もあるだろう。

しかし、絶対に蔑みを持つ人には起こせない立派な行動でもあるはずだ。自分にできないことを一生懸命にやっている姿をみて人は心を動かされるのであろう。このような気付きを互いに与え合いながら、日々を過ごせることができれば幸いだ。そして、もしかすると自分が蔑みを感じていた人こそが、自分の新たな一面を見出す鍵になるのかもしれない。

おわりに

この物語の解説を映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ「赤井珠緒たまむすび」で取り上げたようだ。機会があればこの映画に対する町山さんの考えにも触れてみようと思う。

 次回もおすすめして頂いた映画のレビューをしていきたい。興味を持って、立ち寄って頂ければ、有り難く思う。Twitterやコメントで今後も意見に対して積極的に反応が示せる様、初心者ながらに努めたい。

町山智浩の映画ムダ話172 アリス・ウー監督『ハーフ・オブ・イット面白いのはこれから』(2019年)。 文学少女のエリーはアメフト部のポールからラブレターの代筆を依頼される。
町山智浩の映画ムダ話172 アリス・ウー監督『ハーフ・オブ・イット面白いのはこれから』(2019年)。 文学少女のエリーはアメフト部のポールからラブレターの代筆を依頼される。しかしその相手はエリーが密かに恋する美少女アスターだった……。モザイクのように物語を形成する文学や映画を解説します。特に列車を追うシーンが引用され...

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